読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

あなたの知らないF#についての7つの事柄

この記事はF# Advent Calendar 2015の13日目の記事です。

タイトルは釣りで、今回はMicrosoft/visualfsharpリポジトリをウォッチしている中で見つけた個人的に面白かったIssueを取り上げます。

名前空間内でのprivateの意味

現状のF#では、名前空間内でprivateを使った場合に、privateっぽくない挙動を示します。

同じプロジェクト内に、M1.fs, M2.fs, M3.fsを下記の内容のように作ってください。

(* M1.fs *)
namespace NS

module private M1 =
  let x = 10
(* M2.fs *)
namespace NS

module M2 =
  let x = M1.x (* OK *)
(* M3.fs *)
namespace NS.Child

module M3 =
  let x = NS.M1.x (* OK *)

このように、名前空間内にprivateなモジュール(もしくは型)を作っても、同一アセンブリの同一名前空間以下にある型からはアクセスできるのです。 今後のバージョンでは、同一ファイルではない場合に警告になるように変更されるようです。 この挙動に依存している場合、privateではなくinternalを使うように変更しておくといいでしょう。

元ネタ: Suggestion: restrict "private" for items in namespaces to mean "private to the namespace declaration group"

未使用変数の誤検知

F#3.0からは、コンパイルオプションに--warnon:1182を付けることで未使用変数を警告扱いにできるようになっています。

extern指定したメソッドの引数に対する誤検知

extern指定したメソッドの引数を未使用変数として誤検知します。

type ControlEventHandler = delegate of int -> bool

[<DllImport("kernel32.dll")>]
extern void SetConsoleCtrlHandler(ControlEventHandler callback, bool add)
(* --warnon:1182してコンパイルすると、callbackとaddが未使用変数として検知されてしまう *)

これはバグなので、今後のリリースで修正されると思われます。 「(警告をエラー扱いにしている等の理由で)今回避したいんだ!」というときは、識別子を_で始めればOKです。

type ControlEventHandler = delegate of int -> bool

[<DllImport("kernel32.dll")>]
extern void SetConsoleCtrlHandler(ControlEventHandler _callback, bool _add)
(* --warnon:1182してコンパイルしても、_から始まる識別子は除外されるので警告にならない *)
(* ただし、FSharpLintを使っている場合"_を識別子に含めるな!"という警告を出すようになる *)

元ネタ: External function arguments flagged as unused

クエリ式での誤検知

クエリ式でも誤検知します。

(* for xの位置でxが使われていないという警告が出る *)
let res =
  query { for x in [1;2;3] do
          where (x > 2)
          select 1 }

(* 同上 *)
let res =
  query { for x in [1;2;3] do
          let y = x
          select y }

(* これは出ない *)
let res =
  query { for x in [1;2;3] do
          where (x > 2)
          select x }

元ネタ: Query expressions and --warnon:1182

プライマリコンストラクタの引数の型注釈

プライマリコンストラクタの引数に型注釈を付けないと、意図しない推論結果を引き起こします。

type ISomeInterface = interface end
type C1() = interface ISomeInterface
type C2() = interface ISomeInterface

type SomeClass<'a when 'a :> ISomeInterface> (value) =
  member x.Value : 'a = value

  (* 警告「型変数'b'は型''a'に制約されました」 *)
  member x.Method(newValue: 'b when 'b :> ISomeInterface) =
    SomeClass<'b>(newValue)
let x = SomeClass<C1>(C1()) (* OK *)
let y = x.Method(C1()) (* OK *)
let z = x.Method(C2()) (* コンパイルエラー *)

Methodに明示的に型引数を付けてみましょう。

(* コンパイルエラー「この束縛に関する1つまたは複数の明示的クラスまたは関数型の変数は、他の型に制限されているため、ジェネリック化できませんでした。」 *)
member x.Method<'b when 'b :> ISomeInterface>(newValue: 'b) =
  SomeClass<'b>(newValue)

駄目みたいです。

プライマリコンストラクタの引数には常に型注釈を付けるようにしましょう。

type SomeClass<'a when 'a :> ISomeInterface> (value: 'a) =
  member x.Value = value

  member x.Method(newValue: 'b when 'b :> ISomeInterface) =
    SomeClass<'b>(newValue)

元ネタ: Bug in the type checker with type variables

ジェネリックメソッドの制限

現状のF#では、ジェネリックメソッドは第一級の値として使えません。

module M =
  let f<'a>() = ()

type C =
  static member M<'a>() = ()
let x = M.f<int> (* OK *)
let y = C.M<int> (* コンパイルエラー「予期しない型引数です」 *)

() |> M.f<int> (* OK *)
() |> C.M<int> (* コンパイルエラー *)

元ネタ: Provided methods with static params can't be used as first-class function values

リスト式(や配列式)の型推論のコーナーケース

下記のコードのコンパイル結果は一貫性がないように見えます。

let f (xss: 'a seq seq) = ()

f [ [ 'c' ] ] (* OK *)

let charListList = [ [ 'c' ] ]
f charListList (* コンパイルエラー「型'char list list'は型'seq<seq<'a>>'と互換性がありません」 *)

F#では、リスト(や配列)の要素の型がリスト式(や配列式)の型チェックよりも前に分かっている場合、各要素をその要素型にアップキャストを試みます。 これは、継承を考慮すると仕方なかった選択のようです。

例えば、型Widgetを継承したLabelButtonがあったとします。

let xs: Widget list = [ Label(); Button() ] (* OK *)

これは、リスト式[ Label(); Button() ]の型チェック前にこのリスト式の型がWidget listになるとわかっている(xsに型注釈が付いている)ため、リスト式の各要素はWidget型にアップキャストされます。 そのため、このコードはコンパイルが通ります。 ではこちらはどうでしょう?

let xs = [ Label(); Button() ] (* コンパイルエラー「この式に必要な型はLabelですが、ここでは次の型が指定されています Button」 *)

これは、リスト式の型チェック前に型がわかっていないので、コンパイルエラーです。

さて、これで元のコードがなぜ一貫性がないように見えたかがわかります。 元のコードを再掲します。

let f (xss: 'a seq seq) = ()

f [ [ 'c' ] ] (* OK *)

let charListList = [ [ 'c' ] ]
f charListList (* コンパイルエラー「型'char list list'は型'seq<seq<'a>>'と互換性がありません」 *)

一回目のfの呼び出しでは、引数の型が「'a seq seq」になることがわかっています。 一番外側のseqの要素の型は、'a seqになることがわかっている、ということです。 実際に渡している要素は[ 'c' ]であり、これはchar list型です。 char list型はchar seq型にアップキャスト可能(listseqを実装している)ため、コンパイルが通るわけです。

二回目のfの呼び出しでは、リスト式ではなくいったん変数に入れたものを渡そうとしています。 charListListの型はその名前通り、char list listです。 リスト式ではないので要素型のアップキャストは行われず、'a seqという型を期待しているところにchar listがくるため、コンパイルエラーになるのです。

これを回避するためには、フレキシブル型を使います。

let f (xss: seq<#seq<'a>>) = () (* 'a #seq seq とは書けないっぽい *)

f [ [ 'c' ] ] (* OK *)

let charListList = [ [ 'c' ] ]
f charListList (* OK *)

フレキシブル型の表記(#seq<'a>)は型制約のあるジェネリック型('b when 'b :> seq<'a>)の略記法です。 これによって、seq<'a>の代わりにその派生型も許されるようになったため、char list list型の変数も渡せるようになりました。

元ネタ: Possible inconsistency in type unification

メソッド(もしくはコンストラクタ)呼び出しの特別ルール

obj(もしくは'a)を1つ取るメソッドがあり、ほかにオーバーロードの候補がない場合、コンパイルできなさそうでできるコードが書けます。

type C =
  static member M(x: obj) = ()
C.M() (* OK *)

え、引数は?と思うかもしれませんが、引数は()が渡っています。 この特別扱いルールは、

場合のみに有効です。 そのため、オーバーロードを追加するとこのコードは通らなくなります。

type C =
  static member M(x: obj) = ()
  static member M(x: int, y: int) = ()
C.M()   (* コンパイルエラー *)
C.M(()) (* OK *)

このルール、何か嬉しい場合があるんでしょうか・・・

元ネタ: Implicit class constructor with a single obj argument could be called without argument which will pass null as argument

まとめ

今まで知らなかった言語仕様とかに気付かされることが多いので、登録されたIssueを読んでみると面白いです。 Resolution By Designタグが付けられたIssueがまずはおススメです。

F#のクラス(の主に定義する部分)についてまとめ

この記事はF# Advent Calendar 2015の5日目の記事です。 4日目は@n_enotの「F# でTDDした話 前編?」でした。

※業務連絡。F# Advent Calendar 2015の参加者の皆さん、今年は登録順ではなく、申請順になってしまっているようなので、イベントページに登録はしたけどまだ書く日付が決まっていない方は、イベントページを編集して書きたい日に自分の名前を書いておくようにしましょう。

関数型の何かと思った?

残念、クラスベースオブジェクト指向プログラミングの話でしたー。

今までF#のクラス定義に関する機能がよくわかっていなかった(まともに使ってこなかった、といってもいい)ので、ちょっとまとめつつ勉強してみました。 基本的に、言語仕様の「8.6 Class Type Definitions」をまとめた内容になっています。 より実践的な方向から再構成しているので、仕様書よりも読みやすく意義も伝わりやすいかな、と思います*1

クラス定義の基本

F#でのクラス定義は次のようになっています。

type 型名 =
  class
    クラス本体
  end

F#では、クラスは何もしなくてもシリアライズ可能です。 シリアライズ不可能にする場合、AutoSerializable(false)属性を与える必要があります。

class/endの省略

通常、class/endは省いて定義します。

Class属性によるclass/endの省略

Class属性をつけると、class/endは不要です。

[<Class>]
type 型名 =
  クラス本体

Classのほかに、Interface属性やStruct属性もあります。 列挙型は構文が全く違うためか、Enum属性はありません。

ただ、これから説明する方法によるclass/endの方が便利なので、Class属性は個人的にはあまり使いません。

クラス固有の要素によるclass/endの省略

下記の要素を持つ場合、class/endは不要です。

  • プライマリコンストラクタ(primary constructors)
  • 追加オブジェクトコンストラクタ(additional object constructors)
  • 関数定義(function definitions)
  • 値定義(value definitions)
  • 非抽象メンバー(non-abstract members)
  • 引数付きの継承宣言(inherit declarations that have arguments)

これらの詳しい説明は、それぞれの要素の説明の際に合わせてします(関数定義は引数があるかどうかだけなので、この記事では値定義としてまとめます)。 とりあえずは、「ほとんどの場合でclass/endは省略でき、コンパイルエラーになったらclass/endを書くかClass属性をつける」と覚えてしまって大丈夫です。

コンストラクタの定義

F#には、コンストラクタは次の2種類があります。

プライマリコンストラクタ

プライマリコンストラクタは、型名の後ろに引数リストを書くことで定義します。

type 型名 (引数リスト) =
  クラス本体

この引数リストには、識別子か、型指定した識別子しか書けません。 例えば、

type SomeClass (x: int, y) = ...

はOKですが、

type SomeClass ((x1, y1), (x2, y2)) = ...

のように、複雑なパターンは書けません(コンパイルエラーになる)。 複雑なパターンが書きたい場合は、値定義(value definition)を使います。

type SomeClass (p1, p2) =
  let (x1, y1) = p1
  let (x2, y2) = p2
  ...

クラスの本体部分に書かれたメンバー定義(追加オブジェクトコンストラクタ含む)以前の部分は、プライマリコンストラクタの本体部分とみなせます。 これらのコードはプライマリコンストラクタの呼び出し時に実行されます。 letのほかにdoも使えます。

type SomeClass () =
  let x = 10
  do printfn "%d" x

この例では、SomeClassを生成するたびに10と表示されます。 他の部分のdo束縛と違い、ここでのdoは省略できない点に注意してください。

プライマリコンストラクタの補佐としての追加オブジェクトコンストラクタ

基本的にはプライマリコンストラクタを使えばいいですが、主に2つ以上のコンストラクタが提供したい場合には追加オブジェクトコンストラクタを定義します。

例えば、intの値を2つ保持するクラスAが定義したいとします。 この場合、プライマリコンストラクタを使って

type SomeClass (x: int, y: int) =
  ...

とすることになりますが、yの方は大体のケースで0固定だ、という場合、プライマリコンストラクタ以外にコンストラクタが欲しくなります。 こういう場合に追加オブジェクトコンストラクタを使います。

type SomeClass (x: int, y: int) =
  new (x) = SomeClass(x, 0)
  ...

このように、newキーワードを使うことで追加オブジェクトコンストラクタを定義できます。 追加オブジェクトコンストラクタでは、本体の最後の式としてコンストラクタを呼び出す必要があります*2

コンストラクタの呼び出し後に何か副作用のあるような処理がしたい場合、thenを使います。

type SomeClass (x: int, y: int) =
  new (x) =
    printfn "プライマリコンストラクタを呼び出します。"
    SomeClass(x, 0)
    then
      printfn "プライマリコンストラクタが呼び出されました。"

それ以外の役割の追加オブジェクトコンストラクタ

継承が絡んでくるので、まず先に継承についてを説明します。

継承

継承はinheritキーワードを使い、値定義よりも前に宣言します。

type SomeBaseClass (x: int) = do ()
type SomeSubClass () =
  inherit SomeBaseClass(10)

  let someValue = 20

クラスがプライマリコンストラクタを持つ場合、継承するクラス名に続けてそのクラスのコンストラクタに渡す引数を書きます。 上の例では、SomeBaseClassコンストラクタを引数10で呼び出しています。 値定義など、継承宣言よりも後ろに書く必要のある変数等は使えないので注意してください。

また、継承宣言を省略すると、暗黙的にobjが継承されます。 明示的にobjを継承した場合とbase(基底クラスのメンバーへの参照)の挙動が微妙に異なりますが、気にする場面は出てこないでしょう。

基底クラスの異なるコンストラクタが呼びたい場合に使う追加オブジェクトコンストラクタ

プライマリコンストラクタを持つ場合、すべてのコンストラクタは継承宣言で同時に呼び出される単一の基底クラスのコンストラクタが呼び出されます。 これでは困ったことになる場合があります。 例えば、基底クラスがシリアル化コンストラクタを提供しており、派生クラスもシリアル化可能にしたい独自の状態を持っている場合などです。 この場合、派生クラスは通常のコンストラクタとシリアル化コンストラクタで別々の基底クラスのコンストラクタを呼ぶ必要があります。

type ParseException (row: int, col: int) =
  inherit FormatException("failed to parse")

  new (info: SerializationInfo, context: StreamingContext) =
    (* ここで基底クラスのシリアル化コンストラクタを呼びたいけど呼べない! *)

プライマリコンストラクタを提供せずに、すべてを追加オブジェクトコンストラクタにすることで、これが実現できます。 まず、プライマリコンストラクタを提供しない場合、inherit宣言に引数リストを付けれなくなります。

type ParseException =
  inherit FormatException
  ...

次に、プライマリコンストラクタが無くなったことによって保持できなくなったrowcolvalとしてフィールド化します。 valは値定義のletと比べられることも多いですが、letはあくまでプライマリコンストラクタに付属するものに対して、valはメンバー(フィールド)です。 そのため、プライマリコンストラクタを定義しないとletは使えません(今回の例ではletは使えない、ということです)。 letはフィールドになるとは限りませんが、valは常にフィールドになりますし、値定義ではなくメンバー定義のため、すべての値定義(do含む)よりも後ろに書く必要がある点に注意してください。 valは宣言と同時に初期値を持たせることはできませんが、(DefaultValue属性の付かない)valは、そのすべてをすべてのコンストラクタで初期化することが求められます*3。 これは、プライマリコンストラクタを持つ場合はDefaultValue属性の付かないvalは定義できないことを意味します*4

type ParseException =
  inherit FormatException

  val Row: int
  val Col: int
  ...

valは既定ではpublicなので、先頭を大文字にしてみました。

さて、本題の追加オブジェクトコンストラクタです。 これまでは追加オブジェクトコンストラクタでは他のコンストラクタを呼び出していました(delegate construction)が、基底クラスを呼び出すためには明示的構築(explicit construction)を行う必要があります。

type ParseException =
  inherit FormatException

  val Row: int
  val Col: int

  new (row, col) =
    { inherit FormatException("failed to parse"); Row = row; Col = col }

  new (info: SerializationInfo, context: StreamingContext) =
    let r = info.GetInt32("Row")
    let c = info.GetInt32("Col")
    (* F#ではセミコロンは改行に置き換え可能 *)
    { inherit FormatException(info, context)
      Row = r
      Col = c }

  (* ISerializableの実装は後で *)

このように、追加オブジェクトコンストラクタを使うことで、基底クラスの異なるコンストラクタが呼び出せるようになります。 ちなみに、オブジェクト構築後に副作用のある処理を実行したい場合は、thenを使います。

インターフェイスの実装

F#には空のインターフェイスの指定か、インターフェイスの明示的実装しかありません。

空のインターフェイスの指定

空のインターフェイスの指定は

type SomeClass () =
  interface IEmptyInterface

のように書きます。

インターフェイスの明示的実装

インターフェイスを実装するには、クラス名に続けてwithを書き、その後にインターフェイスの持つメンバーの実装を書きます。

type ParseException =
  inherit FormatException

  val Row: int
  val Col: int

  new (row, col) =
    { inherit FormatException("failed to parse"); Row = row; Col = col }

  new (info: SerializationInfo, context: StreamingContext) =
    let r = info.GetInt32("Row")
    let c = info.GetInt32("Col")
    { inherit FormatException(info, context); Row = r; Col = c }

  interface ISerializable with
    member x.GetObjectData(info, context) =
      base.GetObjectData(info, context)
      info.AddValue("Row", x.Row)
      info.AddValue("Col", x.Col)

インターフェイスの実装では、すでにインターフェイスで型が明示されるため、すべてのメンバーで型を指定する必要がないのも特徴です。

可視性

F#では至る所で不変が既定になっているため、可視性が設定できるものはpublicが既定と思ってかまいません(一部の例外の方を覚えればよい)。 もちろん、可視性はカスタマイズ可能ですので、可視性を狭めることは可能です。

また、追加オブジェクトコンストラクタの項でも書きましたが、letはプライマリコンストラクタの一部であるため、letには可視性を設定できません。 コンストラクタ内で作ったローカル変数くらいに思っておいた方が無難でしょう。

クラス自身の可視性

クラス自身の可視性は、typeとクラス名の間に書きます。

(* 型をinternalに制限 *)
type internal SomeClass () = do ()

プライマリコンストラクタの可視性

プライマリコンストラクタの可視性は、クラス名と(の間に書きます。

(* 型はpublicのまま、プライマリコンストラクタをinternalに制限 *)
type SomeClass internal () = do ()

クラス自身とプライマリコンストラクタの両方に可視性を設定すると、一行に2つの可視性が書かれることになります。

(* 型はinternalに、プライマリコンストラクタはprivateに制限 *)
type internal SomeClass private () = do ()

追加オブジェクトコンストラクタの可視性

追加オブジェクトコンストラクタの可視性は、new(の間に書きます。

type SomeClass (x: int) =
  new internal () = SomeClass(0)

自己参照

プライマリコンストラクタでの自己参照

プライマリコンストラクタで自分自身(いわゆるthis)のメンバーを使いたい場合、プライマリコンストラクタの引数リストの閉じかっこと=の間にasを使って書きます。

(* 名前はthisでもxでもなんでもいい(ここではself) *)
type SomeClass () as self =
  ...

ただ、これを実際に使ったことがあるのは、型プロバイダーを実装する時くらいでしょうか・・・

追加オブジェクトコンストラクタでの自己参照

追加オブジェクトコンストラクタで自分自身のメンバーを使いたい場合、引数リストの閉じかっこと=の間にasを使って書きます。

type SomeClass (x: int) =
  (* 名前はthisでもxでもなんでもいい(ここではself) *)
  new () as self = ...

こちらは実際に使ったことはないかもしれません・・・

Tips

有効な値を持たないクラス定義

Phantom Typeで使うだけの、タグとして型が必要な場合があります。 その場合は値が不要ですので、値を持たない型で十分です。

type Hoge = class end

と定義すると、F#ではデフォルトでnullが無効なため、有効な値がない型が簡単に作れます*5

書けていないトピック

  • 抽象クラスの定義
  • 構造体の定義
  • インターフェイスの定義
  • 列挙型の定義(不要かも)
  • メンバーの定義

いつか書く。

まとめ

オブジェクト指向プログラミング的な機能をあまり使ってこなかったため、今回初めて知ったことがかなりありました。 この記事だけを読むといろいろ面倒に見えますが、実際に書いてみると、よくあるケースを簡潔に書けるようにするためにいろいろと考えられていることがわかりました。 それでも、レコードや判別共用体を使った方が楽な面も多いですから、クラスはF#では基本的には脇役になってしまいますが、知っておくといつか役に立つことがあるかもしれません。 ということで今回はこの辺で。

*1:仕様書の一部分、書いてる人が意義を分かっていなさそうな部分がある・・・

*2:たまに、プライマリコンストラクタを呼び出す必要がある、としている説明を見かけますが、誤りです。ほかの追加オブジェクトコンストラクタでもいいですし、自分自身を呼び出しても構いません

*3:そうしない場合はコンパイルエラー

*4:さらに、mutableも必要になってきます。というか、mutableもつけないと常にゼロ値を表すフィールドになってしまって、意味がないので禁止されているのだと思います。エラーメッセージだけからはわかりにくいですが・・・

*5:Unchecked.defaultofは考えないものとします

re:僕にとってMaybe / Nullable / Optional が、どうしてもしっくりこないわけ。

元ネタ: 僕にとってMaybe / Nullable / Optional が、どうしてもしっくりこないわけ。 - 亀岡的プログラマ日記

OOPの文脈で見ると、元の記事が言っていることもわからなくはないのですが、対象が広すぎていろいろと不正確になってしまっているので、ちょっとまとめてみます。

元の記事が対象にしているのは、Maybe / Optional / Nullableの3つです。 対応する型を持つ言語を見てみると、下記のようになります。

これらは、「値がないこと」を表すもの、という見方では同じですが、それぞれ異なる価値観の元に作られています。

Maybe/OptionalとNullable

これらはすべて型パラメータを取ります*1。 しかし、この中でNullableだけは型パラメータに値型のみという制約が付きます。 これは、C#Nullableは他のものとかなり性質が違うことを意味しています。 元の記事では並べて書かれていましたが、そもそもNullableに関してはここに並べるべきものではありません。

C#のNullable

C#Nullableは、値型にもnullが使いたいという動機で導入された機能です。 そのため、NullableMaybeOptionalと違って、むしろnullを積極的に使えるようにするための機能と言えるでしょう。 これによってC#の上ではNullableを使うことでコード上の見た目だけに関しては、値型でもnullが使えるように見せています。 見た目だけの話であれば、SwiftOptionalと同じように型名の後ろに?が付くため、同じような言語機能に見えますが、実際には全くの別物と考えたほうがいいでしょう。

JavaのOptional

JavaOptionalは、メソッドの戻り値として使うことが想定されているらしく、引数やフィールドに使うことは想定されていないそうです。 JavaOptionalは参照型なので、Optional自体がnullになりうるという点を考えると、引数に使うべきではないというのもある程度納得できます*2

Javaでは現状、型パラメータに指定できるのは参照型だけであり、nullになりうるのも参照型だけです。 そのため、JavaOptionalC#Nullableと違って、(戻り値としての)nullを排除しよう(少なくとも、減らそう)という動機で導入されたとみていいでしょう。

SwiftのOptional

SwiftOptionalは、Javaと名前は同じですが、より言語の仕組みに根差しています。 Javaでは、Optional<T>型の変数にT型の値を代入できません。

Integer i = 42;
Optional<Integer> x = i; // コンパイルエラー

それに対して、Swiftではそれが可能です。

var i: Int = 42
var x: Optional<Int> = i // OK
// Optional<Int>はInt?とも書ける

SwiftではOptionalではない型にnull*3は代入できません。 ですが、Optionalという仕組みによって今までの知識からあまり外れない書き方でnullを扱えるようになっています。

HaskellのMaybe

HaskellMaybeは実装としてはSwiftOptionalに一番近くなっています。 ただ、他の言語と違ってHaskellではそもそも他の言語のようなnullはなく、Swiftのように既存言語ユーザーを取り込むために「今までの知識からあまり外れない書き方」というのも求めていません。 結果だけ見ると、JavaOptionalと同じように、Maybe t型の変数にt型の値は代入できません。

Nullのダメな理由

元記事では、「Nullは何がダメなんだっけ?」について、

  1. Nullは型ではない
  2. あるメソッドがNullになるかどうかの判断ができない

が挙げられています。 細かい点ですが、ここにも誤解があります。

(少なくともJavaでは)Nullは型を持つ

まず、Javaの話であればnullは型を持っています*4。 そのため、「ClassHogenull」という表現は、少なくともJavaにおいては正確ではなく、正確には「ClassHoge型に暗黙変換されたnull」とでもなるでしょうか。 詳しくは言語仕様を参照してください。

ここで言いたかったのはおそらく、「nullはどんな型にも変換できてしまう」ということでしょう。

あるメソッドの結果(もしくは変数)がNullかどうかの判断が型だけからできない

これも細かいですが、あるメソッド(の結果)がNullになるかどうかの判断ができないというのは、正確には「型を見ただけでは」できないのであり、元記事中にあるように、if文によって実行時にはチェックできます。

本題

さて、ここからが本題です。 元記事では、Optionalが解決するのは2だけ、としていますが・・・

Javaの場合

JavaOptionalでは、Optional<T>型とT型は全くの別物であり、相互に暗黙変換できません。 そのため、

  1. (nullに相当する)Optional.empty()Optional型の変数にしか入れることはできない*5
  2. あるメソッドの結果がOptional.empty()になりうるかどうか型だけで判断できる

となります。

Swiftの場合

SwiftOptionalは、Optional<T>型の変数にT型の値を代入できますが、その逆はできません。 そのため、

  1. (nullに相当する)nilOptional型の変数にしか入れることはできない
  2. あるメソッドの結果がnilになりうるかどうか型だけで判断できる

となります。

Haskellの場合

HaskellMaybeは、Maybe t型とt型は全くの別物であり、相互に暗黙変換できません。 そのため、

  1. (nullに相当する)NothingMaybe型の変数にしか入れることはできない
  2. ある関数の結果がNothinsになりうるかどうか型だけで判断できる

となります。

元記事が言いたかったこと

このように、OptionalもしくはMaybeは、1も2も解決できています。 これは十分なメリットであり、このメリットだけでもOptional/Maybeは有用です。

ただ、元記事を見ると、

本当に解決したいのは「Nullに型独自の処理をさせたい」なので、残ったままです

とあります。 つまり、本当に問題にしていたのは、「型Aの値がない場合と型Bの値がない場合で別の処理をさせたい」となります。

if文相当の処理を書く必要性

Optional/Maybeを使ったコードで頻繁にif相当の処理を書いてしまっている場合、それはそもそもOptional/Maybeの使い方を間違っている可能性が大きいです。 リストを操作する関数にリストを返す関数が多く含まれるのと同じように、あるいはTaskを返す関数を内部で呼び出している関数がTaskを返す関数になるのと同じように、Optional/Maybeを返す関数を内部で呼び出している関数は、その関数の戻り値もOptionalになることがよくあります。 この場合、if相当の処理を書くのは間違っています。

// Javaだと思う(Swiftは書いたことないので)
Optional<User> user = findUser(pred);
if (user.isPresent()) {
    // 何かする
    return Optional.of(何か処理の結果);
} else {
    return Optional.empty();
}

例えば、「何かする」の部分がuserの中身を使った関数を呼び出すような処理の場合、

// 値がなかった場合のことは気にしない
return findUser(pred).map(user -> 何かする関数(user)); // ラムダ式を使わずに直接関数を渡す、でも可

のようになるでしょう。 mapの他にも、様々なメソッドが用意されているため、ifによる分岐に頼る場面は少なくなります。 Haskellの場合、do構文によってさらに複雑な例でもすっきり書けますが、それはまた別の話。

手続き的には見えない

さて、上のコードが手続き的に見えるでしょうか? 呼び出し側はOptionalのチェックを行っておらず、コードも短く簡潔です。

ではオブジェクト指向プログラミングではどのようになるでしょうか? Userに対してNullObjectを用意して、このようになるでしょう。

public interface User {
    戻り値の型 何かする処理();
}
public class UserImpl implements User {
    @Override
    public 戻り値の型 何かする処理() {
        // 何かする
        return 何かした結果;
    }
    // ...
}
public class EmptyUser implements User {
    @Override
    public 戻り値の型 何かする処理() {
        return 戻り値の型のNullObject;
    }
    // ...
}
// 呼び出し側は意識しない(意識できない)
return findUser(pred).何かする処理();

呼び出し側だけ見ると、Optionalのときとそんなに変わってませんよね*6。 つまり、元のコードも手続き的には見えないと言っていいでしょう。

NullObjectをちゃんと使いたい、というよりは、Optionalをどう使うか考えたい

OOPの文脈で、どこまでOptionalを使えばいいのかというのはよくわかりません。 Optionalを使うと、どうしてもコードはOOPから離れて行ってしまうという感覚は確かにあります。 どのあたりでバランスを取るのがいいのかはケースバイケースでしょうし、一般化できるものではないと思っています。

コメント欄では id:kyon_mm が(やはりOOPの文脈で)

Optionを返していいのはむしろprivateやprotected的なものだけだと思っていて、それ以外はオブジェクトだったり、バリアント(判別共用体)的な感じで返すのが「オブジェクトとやり取りをしていて、それぞれに責務が割あたっている」といえるのではないだろうか。と思っています。

と言っています。 これはこれで一つの態度ではありますが、基本的なライブラリでは Optional を返す関数*7というのはもっと積極的に作られることになると思います。

FPに軸足を置くか、OOPに軸足を置くかは、対象の性質やメンバーのスキル等によって決めていくしかないでしょう。 ただし、間違ったOptionalの使い方をもって「しっくりこない」というのであれば、まずはOptionalの正しい使い方を学び、実践すべきです。 そのための言語としては、F#なんていかがでしょうか。

*1:Javaは取らなくても許されるとかいう細かい話は置いといて。

*2:フィールドに使うべきではない理由はよくわかりませんが

*3:Swiftではnilだが、この記事ではnullで統一

*4:ただし、その型の変数やフィールドを作ることはできない

*5:Objectは無視します

*6:findUserがnullを返す可能性は考慮しなくていいのかという点はここでは考慮しない

*7:もしくは、Optionalを返す関数を受け取る関数

ChalkTalk CLR – 動的コード生成技術(式木・IL等)に行ってきた

centerclr.doorkeeper.jp

直前で定員を増やしてもらえたので、参加できました。

会自体について

内容は主にILの話と式木の話で、ディスカッションというよりは講義に近い感じでした。 個人的にはディスカッション寄りの会を期待していたのですが、知識レベルにばらつきがあったのと、初めての取り組みということで仕方ないのかな、と。 次回以降で、もしディスカッション寄りの会をやりたいなら、「この本を読了しており内容についてもある程度理解していること」とかにした方がより濃い内容のディスカッションができると思います。 聴講のみの席も用意すると、「ディスカッションに参加するのは怖いけど話は聞きたい」って人も参加できますし*1

最初にKPTをして今回の方向性を決めよう、という試みは面白くはありましたが、会の最初にKも何もないので、KPTにとらわれずに「知りたいこと」「議論したいこと」みたいな分類から始めればいいんじゃないかなぁ、と思いました。 ポジションペーパーを用意してもらって、軽く自己紹介でもいい気はします。

会の内容について

IL

ILについては、ILの存在意義的な話から始まり、C#のコードがどのようなILに落ちるのかをIL Spyを使って見たり、出力されたILがどのように実行されるのかを図にして追ったりする内容でした。 「DebugでコンパイルしてもReleaseでコンパイルしても吐かれるILにさほど差は出ない」と説明があったときには、「C#で構造が大きく変わることは見たことないけど、(nopは置いといても)発行されるILはそれなりに変わるよ!」とか、「F#の場合は構造も結構がらりと変わるよ!」って突っ込みを入れようかと思いましたが自重しました。 最初のKPTでそういう会じゃないというのはわかったので、それを考えると最初のKPTはある程度効果があったと思います。

それと、最初は OpCodes を参考にすればいいでしょうが、ある程度ちゃんとやるなら Standard ECMA-335 は手元に置いておきましょう。

ILはどうやって学べばいいのか?という話の流れで、ILをどうやってデバッグすればいいのか、という話になったので、「生成するIL(が生成するdll)にデバッグ情報埋め込めるから、それすればデバッグできるよ」という話と、「IL Support extension使えばC#(やVBやF#)とILをいい感じに統合できるしデバッグもできるよ」という話をしました。 が、後者のデモ(実際にILをデバッグする例)のせいで前者がちゃんと伝わっていない気がします。こっちもデモすればよかったんですが、手持ちがF#のコード例のみだったので自重したのがいけなかったか・・・ 詳細については、メタプログラミング.NET を熟読しましょう。5.4.2です。Kindle版は安いのでおすすめです。

式木

式木については、木構造の話からはじめ、C#の式木は今や式だけじゃなくて文も扱うよ、という話などをしました。 思うに、式木の使い方っていくつかに分類されて、それぞれで目的がバラバラだからわかりにくいんじゃないでしょうか?

  • 式木を別の構造に移しかえる(最終的にはCompileしてデリゲートに落として.NET上で実行)
  • 式木を別の構造に移しかえた上で何らかの直列化をする(最終的にはSQLなどになって何らかのミドルウェア上で実行など)
  • 式木を走査して情報を取り出す(最終的には.NET上のオブジェクト)

LINQ to EntitiesなどでRDBを使う例は上記の2番目に、メタ情報を取得するために式木を使うことでコードの変更に強くなるよ、という例は上記の3番目に当たるわけです。 ここら辺をひとまとめにして「式木の使い道」で説明しちゃうと分かりにくいのかな、と思ったり。 このあたりはちょっとした図を作るといいのかなぁ・・・

Excel方眼紙について

最初に行ったKPTに、「Excel方眼紙を駆逐する」というものがありました。 それを受けて、メッセージを実行時にExcelから取ってくる仕組みを式木を使って実装した、という話があったんですが、ここは声を大にして言いたい。

それ、Excelから脱却してないじゃん!むしろExcelの活用の話じゃん!!!

はい。 まぁ、そもそも「Excel方眼紙の駆逐」が何を指しているのかあいまいだ、という問題があります。

  • Excel方眼紙なんて不要だから開発現場から全撤廃するべきだ
  • Excel方眼紙を納品しなければならないのは仕方ないけど、プログラマに使わせるのは非効率だからすべてのExcel方眼紙は別の何かから生成されるべきだ
  • Excel方眼紙を納品しなければならないのは仕方ないけど、プログラマに使わせるのは非効率だからプログラマExcel方眼紙に触れなくてもいい環境を作るべきだ
  • Excel方眼紙を使うのは仕方ないけど、それとプログラムの対応付けを手でやるのは非効率だから自動化すべきだ

ざっと思いついただけでもこんな感じで、上に行くほど駆逐の意味合いが強く、下に行くほど弱いです。 このなかで、メッセージを実行時にExcelから取ってくる仕組みは一番下であり、これより弱いものはちょっと思い浮かびません。 と言うわけで、Excel方眼紙を駆逐する、というテーマについてであれば、もっと強いものがほしいと思うのでした。

個人的な取り組みとしては、1ソース(外部DSL)から複数の成果物を出力する方法でプログラマExcel方眼紙を触る必要性をある程度軽減できないかな、ということでTableDslというものを作っています(色々あって停滞中)。 社内ツールになりますが、メッセージ一覧も同様の考え方でプログラマExcel方眼紙を触らなくていいようにしているもの(こっちは内部DSL)も作ってます。 汎用的な仕組みとしては、F# TypeProviderを使ってExcel方眼紙を扱うライブラリを作っている(いた?)のですが、これは今風に書き直したいところです。 これらは2番目の方向性ですね。

3番目の方向性としては、これまた社内ツールとして結合テストの実行を支援するツールがあります。 これは4番目の方向性と似ていますが、「対応付け」でどちらかがどちらかを強く意識する必要がなくなる点で異なります。対応付けを2段階にし、途中にツールがくることでより明確に役割が分離されます。

2, 3, 4番目の方向性で使うのは、ExcelファイルのIOができるライブラリになります。

  • NPOI
  • EPPlus
  • ClosedXml

などが候補になります。COMオートメーション?知らない子ですね。

Excel VBA

ある意味Excel方眼紙よりも面倒なのが、Excel VBAです。 1セル1文字とか無茶なことをしていない場合、Excel方眼紙をプログラム上で扱うのはそれほど面倒ではないですが、Excel VBAを駆使して作られたシステムはヤバいです。 こいつらを置き換えるためには、例えば下記のようなものが使えます。

FCellのデモ動画は強烈なので見てみるといいでしょう。

いいですか、駆逐すべきはExcel方眼紙よりもExcel VBAです。

まとめ

  • IL Support布教できてよかった
  • 動的生成されたILのデバッグのデモすればよかった
  • Excel方眼紙よりもExcel VBAを駆逐したい

*1:一応補足しておきますが、そういう形式で開催しろ、と言っているわけではない

*2:いつの間にかCodePlexからGithubに移動してた・・・

引っ越した

ということで、引っ越しました。 新住所は愛知のどっかです。

引っ越してほしくなったものです。 届いたら喜びます。

シャドーイングとイミュータブルプログラミング

シャドーイングのない言語と、イミュータブル中心のプログラミング(以下イミュータブルプログラミング)の相性って悪いのでは?と思ったのでブログに残しておきます。

シャドーイングとは

既存の変数と同名の変数を定義して、そのスコープで既存の変数にアクセスできなくする機能です。 例えば、F#ではシャドーイングができるので、

let f x =
  if x % 2 = 0 then
    (* 引数のxをシャドーイング *)
    let x = -1
    printf "%d, " x
  (* スコープが抜けたので、引数のxを表示 *)
  printfn "%d" x

f 10    (* => -1, 10 *)
f 11    (* => 11 *)

となります。

シャドーイングのない言語、例えばC#では同じことはできないので、別の名前を付けるか、再代入で回避することになります*1

public void F(int x)
{
    if (x % 2 == 0)
    {
        var otherX = -1;
        Console.Write("{0}, ", otherX);
    }
    Console.WriteLine(x);
}

シャドーイングの使い道

シャドーイングの使い道としては、例えば以下のようなものがあります。

  • ミュータブルな変数の範囲の制限
  • イミュータブルプログラミングでの状態変数の受け渡し

ミュータブルな変数の範囲の制限

F#にはミュータブルな変数があります。 ですが、一般的なF#プログラマは極力ミュータブルな変数を使いません。 どうしてもミュータブルな変数が使いたくなったとしても、ある時点以降では再代入が行われないと分かっているなら、ミュータブルな変数をシャドーイングすることで、以降で誤って再代入できないことをコンパイラに保証させることができます。

let mutable x = 10
(* xに再代入する場合があるコード *)
...

(* ここからはxに再代入しない *)
let x = x
...

イミュータブルプログラミングでの状態変数の受け渡し

イミュータブルプログラミングしていると、ある変数をクローンして一部分を書き換えた値を作り出すというコードが結構出てきます。 このような場合にシャドーイングを使えば、更新前のいらなくなった変数にアクセスできなくなるため安心してコーディングできます。

let f newKey cache =
  let cache = cache.Clone(key = newKey)
  g cache (* このcacheはシャドーイングされた方のキャッシュ *)

しかし、シャドーイングのない言語ではこれはできません。 簡単に取れる回避策としては、イミュータブルプログラミングを一部捨てて、引数に再代入するか、新しい名前を付けるかです。

public SomethingResultType F(Cache cache, Key newKey)
{
    var newCache = cache.Clone(key: newKey);
    return G(newCache);
}

これは新しい名前を付けた場合です。 しかしこの場合、

public SomethingResultType F(Cache cache, Key newKey)
{
    var newCache = cache.Clone(key: newKey);
    return G(cache);
}

のように間違えて元の変数を使ってしまえます。 というか、仕事で実際に使ってしまいました。 シャドーイングさえあればこんなミスはしませんでした*2し、同じものを表すのに別の名前を付けなければならないのはそもそも違和感があります。

もう一方の「再代入」で回避する方法は、一部とはいえイミュータブルプログラミングを捨てることになるので、他の回避策がある場合に取りたくはありません。 あまりイミュータブルとミュータブルを行ったり来たりしたくないですしね。

ということで、シャドーイングのない言語はイミュータブルプログラミングと相性が悪いのではないでしょうか?*3 シャドーイングがない言語では、イミュータブルプログラミングを全面的に採用するのはあきらめたほうがいいな、というのが現時点での考えです。

*1:ただし、そうそうないが、既存の変数と新しい変数の型が違う場合は再代入では対応できない場合もある

*2:typoしてシャドーイングしたつもりができていなかった、ということもあり得ますが・・・

*3:Stateモナド等を使って状態変数を隠すというのも考えられなくはないですが、シグネチャ壊しちゃうのでいろいろ面倒

再帰関数のスタックオーバーフローを倒す話 その3

再帰関数のスタックオーバーフローを倒す話 その2の続きで、最後です。 前回はCPS変換じゃスタックオーバーフローが回避できない場合もあるよという話でした。 前提知識は、F#と、スタックについてです。 これまではCPSの話を中心にしてきましたが、この記事ではCPSの知識とか不要です。

F#で再帰関数によってスタックオーバーフローが起きる場合に、それを回避する方法としてはその1で見たように、CPS変換するというのがあります。 しかし、この方法はその2で見たように完全ではありません。

そのほかの方法としては、CPSではない形で末尾再帰にする方法が考えられます。 CPSでない形で末尾再帰にすれば、tail.ILプレフィックスによる方法ではなく、ループに変換されることによる最適化が効くようになるので、スタックオーバーフローを防げます。 しかし、CPS変換はほとんど機械的に末尾再帰に書き換え可能でしたが、CPS変換を使わずに末尾再帰に書き換えるのは常人にはつらいものがあります。

どうしようもないので、最後の手段です。 コンパイラは単純な再帰しかループに変換してくれませんが、人間なら・・・人間なら再帰をループに変換できるのでは?

ということで、再帰関数のスタックオーバーフローを倒すために、再帰関数をループで書き直してしまいましょう! イミュータブル?関数型言語?なにそれおいしいの???

再帰をwhileで書き換える

では、どうやって再帰whileで書き換えればいいのでしょうか? 簡単な例から見ていきましょう。

末尾再帰関数をwhileで書き換える

末尾再帰関数は簡単にwhileに書き換え可能です。

let fact n =
  let rec fact' acc = function
  | 0 -> acc
  | n -> fact (acc * n) (n - 1)

  fact' 1 n 

アキュムレータ変数を使った階乗の計算をする関数です。 これをwhileで書き換えると例えばこうなります。

let fact n =
  let mutable n = n   (* 書き換え可能変数で引数をシャドーイング *)
  let mutable acc = 1 (* fact' 1 nに相当。accの初期値を設定 *)
  while n <> 0 do     (* ループ判定には、元の再帰関数の終了条件の否定を書く *)
    acc <- acc * n    (* fact (acc * n) (n - 1)のうち、計算の主体をaccに再代入 *)
    n <- n - 1        (* fact (acc * n) (n - 1)のうち、終了条件に関わる部分をnに再代入 *)
  acc                 (* ループを抜けた際にaccに結果が入っている *)

手順は大体以下の通りです。

  1. 終了条件判定のための変数をmutableで作る
  2. 結果格納用の変数をmutableで作り、初期値を入れておく
  3. 再帰関数の終了条件の否定をwhileのループ判定にする
    • ループを続行する条件なので、終了条件の否定になる
    • 複数の終了条件がある場合は、&&でつなぐ(一つでも再帰の終了条件を満たせば脱出 → 一つでもループの続行条件を破れば脱出)
  4. whileの中には再帰部分を書く
    1. 再帰で計算していた部分をコピーして、結果格納用の変数に結果を再代入
    2. 終了条件判定の更新をしていた部分をコピーして、終了条件判定のための変数に結果を再代入

このように無事書き換えれましたが、正直末尾再帰関数をわざわざループに書き換える必要性はないです。 だってこの程度ならコンパイラがやってくれますからね。

スタックが必要な再帰をwhileで書き換える

末尾再帰ではない再帰は、簡単にはループに変換できません。 なぜなら、再帰呼び出しから戻ってきた後に何らかの計算が必要なため、 どこかにそれを計算するための情報を取っておかないといけないからです。

例えば、末尾再帰ではない階乗を計算する関数を考えてみます。

let rec fact n =
  match n with
  | 0 -> 1
  | _ -> n * fact (n - 1)

この関数はn0ではないときに再帰後に計算が必要なので、末尾再帰版の手順ではwhileに書き換え不可能です。 この種の関数をwhileで書き換えるにはどうしたらいいでしょうか?*1

まずは、末尾呼び出しではない再帰関数がどのようにして実現されているかを見てみましょう。

末尾呼び出しではない再帰関数について

末尾呼び出しではない再帰関数は、呼び出し元の情報(環境)をスタックとして保持することで、 再帰呼び出しから戻ってきた後でもその後の処理を実行できるようにしています。

let rec fact n =
  match n with
  | 0 -> 1
  | _ -> n * fact (n - 1)

この場合、fact 2を呼び出すと、まずスタックに1つ環境が積まれます。

+----------------+
| fact { n = 2 } |
+----------------+

n0ではないのでn * fact (n - 1)のブランチが実行されます。 ここでfact再帰的に呼び出していますが、この呼び出しが終わった後にその結果とこの環境でのnを乗算する必要がありますが、 その情報をスタックに積んでおくことでそれを可能にしています。

fact呼び出しがあるため、スタックに新しい環境が積まれます。

+----------------+
| fact { n = 1 } |
+----------------+
| fact { n = 2 } |
+----------------+

またもやn * fact (n - 1)のブランチが実行されるので、スタックに新しい環境が積まれます。

+----------------+
| fact { n = 0 } |
+----------------+
| fact { n = 1 } |
+----------------+
| fact { n = 2 } |
+----------------+

n0の場合、1のブランチが実行されます。 こちらのブランチでは再帰呼び出しはしていないので、新たな環境がスタックに積まれることはありません。

逆に、関数呼び出しが完了するためスタックが消費されます。

+----------------+
| fact { n = 1 } |
+----------------+
| fact { n = 2 } |
+----------------+

この状態でfact 0の呼び出し元だったn * (fact 0)が実行されます。 nはスタックに積まれた先頭の環境を参照すると1と分かるので、fact 0の結果と乗算し、結果は1になります。 乗算後に必要な計算はないため、スタックが消費されます。

+----------------+
| fact { n = 2 } |
+----------------+

同様に、2 * 1が実行され、結果は2になります。 最終的にfact 2の結果として2が得られました。

このように、再帰関数はスタックを使って実現されています*2。 このスタックにはサイズの上限があり、それを超えてしまった際に発生するのがスタックオーバーフローです。

スタックをプログラマが管理する

上で見たスタックは、実行環境が用意してくれるスタックのため、ユーザからは扱えません。 これをプログラマが管理することで、再帰呼び出しと同じ動作をwhileとして再現できます。

let fact n =
  let stack = System.Collections.Generic.Stack<int>()
  let mutable n = n
  (* 処理すべきデータをすべてスタックに積む *)
  while n <> 0 do
    stack.Push(n)
    n <- n - 1
  let mutable res = 1
  (* スタックがなくなるまで処理する *)
  while stack.Count <> 0 do
    res <- res * stack.Pop()
  res

この書き換えの戦略では、処理すべきデータをスタックに積むフェーズと、 スタックからデータを取っていって実際に処理するフェーズに分けています。 この戦略は処理すべきデータが簡単にわかる場合のみに使える方法です。

通常は、最初に処理すべきデータが分からないことが多いので、 スタックからデータを取ってはスタックに積む必要があるかどうかを確認していく、 という戦略を取ることが多くなるでしょう。

let fact n =
  let stack = System.Collections.Generic.Stack<int>()
  stack.Push(n)
  let mutable res = 1
  (* スタックが空になるまでループする *)
  while stack.Count <> 0 do
    (* Popした結果によって処理を分岐 *)
    match stack.Pop() with
    | 0 -> () (* スタックに積まれた値が0ならこれ以上処理はしない *)
    | nonZero ->
        (* スタックに積まれた値が0以外なら、その値-1をスタックに積み、 結果を更新 *)
        stack.Push(nonZero - 1)
        res <- res * nonZero
  res

この戦略では、ループ中で分岐によっては新しい値をスタックにpushしています。 このように、スタックに積まれている値によっては新しい別の値をスタックに積むと、 たいていの再帰whileに変換できます。

相互再帰をwhileで書き換える

式木の変換などは、相互再帰によって実現されている場合があります。 相互再帰を直接whileに変換するのは難しいので、まずは相互再帰を自己再帰に書き換えてやるのがいいでしょう。

let isEven n =
  let rec isEven' n =
    match n with
    | 0 -> true
    | nonZero -> isOdd (nonZero - 1)
  and isOdd n =
    match n with
    | 0 -> false
    | nonZero -> isEven' (nonZero - 1)

  isEven' n

相互再帰の自己再帰への書き換えには、関数を表す判別共用体を導入します。

type RecFunc =
  | CallIsEven of int
  | CallIsOdd of int

let isEven n =
  let rec loop = function
  | CallIsEven n ->
      match n with
      | 0 -> true  (* isEven'を0で呼び出した場合に相当 *)
      | nonZero -> loop (CallIsOdd (nonZero - 1))  (* isEven'を0以外で呼び出した場合に相当 *)
  | CallIsOdd n ->
      match n with
      | 0 -> false (* isOddを0で呼び出した場合に相当 *)
      | nonZero -> loop (CallIsEven (nonZero - 1)) (* isOddを0以外で呼び出した場合に相当 *)

  loop (CallIsEven n) (* 最初はisEven'を呼び出していたので、CallIsEvenを渡す *)

あとは、これをこれまでの知識を元にしてwhileに書き換えます。 今回は単純な例なので、スタックを自分で管理せずに書き換え可能です。

type RecFunc =
  | CallIsEven of int
  | CallIsOdd of int

let isEven n =
  let mutable data = CallIsEven n (* 最初はisEven'を呼び出していたので、CallIsEvenを渡す *)
  let mutable res = true
  let mutable isCont = true
  while isCont do
    match data with
      (* isEven'を0で呼び出した場合に相当 *)
      (* 0は偶数なので、resにtrueを入れ、isContをfalseにして次のループに入らないようにする *)
    | CallIsEven 0 ->
        res <- true
        isCont <- false
      (* isEven'を0以外で呼び出した場合に相当 *)
      (* 次のループで処理するdataを新たに作るだけ *)
    | CallIsEven n ->
        data <- CallIsOdd (n - 1)
      (* isOddを0で呼び出した場合に相当 *)
      (* 0は奇数ではないので、resにfalseを入れ、isContをfalseにして次のループに入らないようにする *)
    | CallIsOdd 0 ->
        res <- false
        isCont <- false
      (* isOddを0以外で呼び出した場合に相当 *)
      (* 次のループで処理するdataを新たに作るだけ *)
    | CallIsOdd n ->
        data <- CallIsEven (n - 1)
  res

相互再帰を自己再帰に書き換えてしまえば、今まで見た方法を使ってwhileに書き換え可能です。

まとめ

結局、F#でスタックオーバーフローを完全に解決するためには、

  • CPSではない形の末尾再帰に書き換える
  • それが難しい場合、whileで書き換える

という悲しい結果に終わりました。 さらに、継続モナドをコンピュテーション式で実装するとスタックオーバーフローしてしまう、という悲しい現実もわかりました。

このような悲しい現実と向き合って実装した(実装している)のがFSharp.Quotations.Compilerです。 stackwhileによって、F#の式木をILに変換しています。

この一連のシリーズは、このライブラリを作るにあたって得た知見(の大きく分けて片方の部分)を公開するために書きました。 もう片方の部分(IL生成周りの知見)についても、やる気が起きたらまとめようと思います。

とりあえず、疲れたのでこの辺で・・・

*1:もちろんこの例では簡単に末尾再帰関数に書き換え可能なので、末尾再帰関数にしてしまうのが一番手っ取り早いでしょう。しかし、簡単には末尾再帰に書き換えれないものも多いので、その場合にどうすればいいかを考えていきます。

*2:再帰関数は」と書きましたが、再帰ではない単なる関数呼び出しも同様です。